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ご挨拶
第8回日本うつ病リワーク協会年次大会
大会長
鷲塚 伸介
(信州大学医学部精神医学教室 教授)
この度、第8回日本うつ病リワーク協会年次大会を、2025年4月26日 (土)~27日 (日)の2日間、 長野県松本市の 「まつもと市民芸術館」 で開催させていただきます。
本協会の前身である「うつ病リワーク研究会」が2008年に結成されたときはごく小さな集まりだったものが、その後徐々に構成員を増やし、2018年2月に「研究会」から現在の「日本うつ病リワーク協会」に発展したときには、構成施設数221、会員数は945名を数えるまでに至りました。「その後も協会は順調に発展を続けた」と書きたいところですが、2024年1月31日現在、施設数は205、会員は1084名となり、会員数こそ微増したものの、協会を構成する医療機関はむしろ減少しています。これには様々な要因が考えられますが、地方における医療リワークをとりまく厳しい環境が理由の一つにあげられるかもしれません。
大会長である私が住む長野県を例にとると、協会が発足した2018年に2,073,196人だった県民人口が、2024年2月には200万人を割ってしまうなど、わずか6年の間に7万人以上も人口減少し、50年前の1973年の水準に戻ってしまいました。さらに、少子高齢化の進行により、単なる人口減だけでなく生産年齢人口の減少が深刻な問題となっています。たとえば1975年の人口構成において、15-64歳の生産年齢人口は66.3%だったものが、2023年には55.6%と10%以上も減っています。精神的不調を来しても、大企業が少なく中小企業が事業所のほとんどを占める地域では、働き手が少ないだけに社員は簡単には休むとは言いだしにくい心理が働きますし、仮に休職し療養できたとしても企業は一刻も早い復職を求めがちになりますから、リワークのために長期の休みをとりづらい環境になることを意味します。質の高い医療と経営との両立に頭を痛めている地方都市の先生方にとって、利用者が十分いるのか不透明な状況下で、優秀なスタッフを複数揃えて運営する医療リワークに乗り出すことは、施設の存亡をかけて臨む覚悟が必要というのは言い過ぎでしょうか。
しかし、一方ではこんな数字もお示しできます。当協会の会員施設の所在地を見ますと、およそ28%の医療機関は人口20万人未満の市町村にあり、私が勤務する信州大学がある松本市など人口30万人未満の都市にまで対象を拡げると、協会所属施設の約40%が含まれることになります。大都市に隣接する地域もありますから、これらの施設を一律に「人口減が進む地方都市所在」という括りにはできませんが、地方都市にありながら、質の高いプログラムを実践し、実績を残して利用者や企業の信頼を得ている医療機関があることにも触れないわけにはいきません。今回の年次大会は、こういった地方で運営されている医療リワークに目を向けます。「量」に多くは期待できないものの「質」が高いからこそ持続可能だと仮定すれば、その医療実践は地方のみならず、大都市部でのリワーク運営にも必ずや役立つ話題提供や議論が行われるものと信じます。
4月末の信州は、桜はすでに散っていますが、新緑が美しく北アルプスの雪景色と素晴らしいコントラストを見せる季節です。会場のまつもと市民芸術館の目の前には松本市出身の草間彌生の常設展が見られる松本市美術館があり、松本城にも徒歩15分と学会の合間に豊かな文化に簡単に触れることができます。松本は信州そばはもちろん、地酒やワインの質も高く、そば打ち名人の実演を見ていただき、その打ちたてのおそばとお酒で楽しい夕べの時間もお届けしたいと思っております。多くの方のご参加をお待ちしています。